Last Love1
「中尉は銃の扱い上手いよね。」
「・・・・・。」
「俺もそれくらい欲しかったな。銃の才能。」
過去に何があったのか。
過去に何をしたのか。
私は彼のことを知らなかった。
Last Love
「ジャン!」
「、久しぶりだな。」
「ジャンも。背伸びた?」
「馬鹿か。」
2人が最近会ったのは去年の真冬。
今から丁度10ヶ月前のことだ。
2人とも勤務が忙しくて中々会うことができない。
しかし、親友という名の絆は時をモノともしない。
「俺も東方についに来たな。」
「遅かったな。」
「ま・・・西部にイロイロあってね。」
「気にするなよ。」
「するさ・・・、死ぬまで。」
は自分より少し高いジャンのに1つの包みを渡した。
「なんだ?これ?」
「煙草。ヘビースモーカーのジャンには一番のお土産だろ?」
「・・・・俺、煙草買えねぇほど金ないわけじゃないんだけど。」
「違うって!その煙草は俺のじいさんの所の!」
「・・・・・・・懐かしいな。元気か?」
「うん、前ほどじゃないけど。まだ元気でやってる。」
「サンキュ。」
「どういたしまして。」
は今日一日の最高の笑顔をした。
しかし、その笑顔を覆す出来事が起こった。
「キャー!!」
叫び声はの血を騒がせる。
膝から下の力が抜け胃の中の物を全て吐き出す。
「おい!!」
「だ・・大丈夫・・・早く・・助けないと。」
嘔吐物の中には血も少々混ざっていた。
ジャンは親友の言う通りに叫び声のした方向に向かう。
「おい!どけ!!邪魔だ!」
叫び声のした回りには野次馬が集まっており、ザワザワと犯行を煽っていた。
「お、お、お、お、お前!!」
「あ?」
野次馬を掻き分けた先には一人の男が女性に刃物を突きつけていた。
呂律が悪いことから酒に酔っているか、もしくは、薬の中毒者とジャンは思った。
「お、お、俺の、俺、俺の、俺のつ、つ、つ、妻をぉぉ。」
なんとも聞き取りにくい声で犯人は喋る。
ジャンは腰にある銃を抜こうとした。
「ジャン!」
しかし、後ろにが来てそれを阻止する。
「なにすんだよ!」
「考えろ!犠牲者を増やすきか!」
らしくなく、乱していた。
あれからまた何かを嘔吐したらしく、の制服は血や嘔吐物にまみれていた。
「とにかく、説得するんだ。」
「・・・でも、あいつは酒に酔ってるよか薬の。」
「だろうな。一番それが考えられる。でも、女性の命を第一に考える。」
「大佐を・・。」
「呼ぶ暇があれば彼女を助ける。」
ジャンは目を瞑った。
彼がどうしてここまで人質にこだわるのか。
その理由を知っているのに、彼の言動に賛成できない自分に嫌気がさしたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ジャン。」
「なんだ?」
「俺は死んでもいい。」
「は?」
「俺が犯人の気を引く。そのうちに彼女を。」
「使わないのか?」
「・・・・使わない。」
「なんでだよ。」
「もうやめたんだ。」
はそう言うと犯人の顔をみつめた。
「馬鹿!、死んでも葬式いかねぇぞ!」
「あぁ、わかった。」
が空に向かい銃を撃った。
その音で犯人がを向く。
は犯人に一歩、一歩と近づいていく。
「おま、おまえ、おまえだなぁ!俺の。俺が俺と俺、俺の妻をぉ・・よく、もぉぉ・・・。」
犯人は唾液をたらしながら泣き始めた。
はその隙に犯人の持っている凶器を掴む。
「うわぁぁあ!!はなせ!はなせ!はなぁぁぁせぇぇぇぇぇ!!!!俺の妻をぉぉ!!」
刃を持っているのだからモチロン、の手から血は流れた。
また、犯人が狂気を動かすことから時々、肉の欠片が道路に落ちた。
その姿を見ながらジャンは人質を救出した。
そして、犯人のコメカミに銃を突きつけた。
「それ以上、コイツを苛めるのはよしてくれ。」
「おまえぇぇぇ!!このぉぉぉお!!!!!」
まだ抵抗する犯人に拳が二つ飛んだ。
それは、のものとジャンのもだった。
「・・・ばったんきゅー。」
「古いな・・・。って!手!手!止血しろ!!!」
「あ、うん。」
はみるにも耐えられない手を心臓よりも高い所に上げ、ポケットのハンカチで傷を巻きつけた。
すぐに血は止まるはずもなく、青いハンカチは赤くそまった。
「さ、連行しよ!」
「ああ、これで少しは給料あがるかねぇ。」
「あがればいいね。」
は自分の血のついた刃物を持った。
その血はなんとも言えず、怪しげに光の反射を受けていた。
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